hirax.net::Keywords::「シミュレーション」のブログ



2010-06-25[n年前へ]

続々 水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 

 「水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!?」「続 水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!?」の続きです。

 水で満たされている水風船がある。その水風船を下からライターの炎で火が広く当たるようにあぶってみることにする。ライターの炎で水風船を10秒あぶったとき、そのときどのような事態が起きているだろうか?60秒ならどうだろう?水風船の大きさや各種条件や、もちろん、実験をする「環境」をも色々な状況下で想像したときに、どのようなことが・どのように生じるか答えなさい。
という問題が出され、それに対してシミュレーション技術に通じた講師陣が(何しろすでに7年連続で表計算ソフトを使った各種シミュレーション実習講習会を続けている方々ですから)、すぐさま手を動かし答えを出したと思いきや、その講師陣の一人がさらに手を動かして、
 偶然、手元に水風船があったので、シミュレーション計算を信じてライターの炎であぶってみたら、20秒ほどで破裂してしまい、水浸しになりました… (泣)。部屋の中がずぶ濡れです…ひどい目に遭いましたorz。
と、シミュレーション計算に反する実験結果を提出したのでした。

 そこで、「燃焼反応が起きているときに、伝熱問題として解けるのか?」とか「熱伝達だけでなく、輻射熱も考えなければいけないかもしれない」とか、「高温微小粒子がゴム表面に接触したかもしれない」「昇温で加硫が進み変性しているかもしれない」とか、ケンケンガクガクとさまざまな可能性が提出され、口から唾が飛び、灰皿が飛び交う状態になったのです。

 どうやら、材料状態や実験過程に依存するところも多そうだ、と思えてきたので、私も(100円ショップで必要な材料を買い)追試実験をしてみることにしました。その実験の様子を撮影したのが、下に張り付けた動画になります。夜の林の中で炎を灯し、その上に綺麗に透けて見える風船をかかげてみたので、ただただ眺めるだけでも面白く幻想的な映像になっていると思います。(もちろん、口だけで何かの可能性を言う人はひとりもおらず、みな数字を挙げつつ定量的な話をしているわけです。

 私が行ってみた実験では、風船が割れることはありませんでした。炎を華やかに大きく広げるパーティーキャンドルで水が入った風船を炙(あぶ)り続けたり、ライターで延々と水風船の下を熱し続けたのですが、水風船は割れず、また、水風船の下を触ってみても、40度にも達していないような感じでした。

 ただし、炎で炙(あぶ)り始めてから10秒後には、風船から水がにじみ始め、15秒後には風船にピンホールが空いたようで、水がその穴から飛び出し始めました。…とはいえ、風船が割れることはありませんでした。…ということは、材料の均質性の原因か、風船ゴム内に生じた気泡の原因か、けれど、応力集中で割れなかったことを考えると、他の考え忘れている要因に影響されているような…とまだまだ完全に理解するためには奥が深そうです。

 もうひとつ面白かったのは、パーティーキャンドルで風船を炙(あぶ)っていたときには、風船は綺麗なままでしたが、ライターで炙(あぶ)ったときには、風船の下側に煤(スス)がみるみるまに広がり付着していったことでした。ライターではガスを完全に燃焼させることができていないようです。

 さて、水風船を火であぶってみても、材料次第・条件次第でさまざまな現象が起きるようです。20秒ほどで風船が割れるときもあれば、何分も割れない場合もある。…ものごとは簡単にふつうの言葉で説明できるほど単純ではありませんし、かといって、正確に説明しきろうとしたら、もしかしたら、その説明を最後まで読んでくれる人はいないかもしれません。けれど、何はともあれ、手を動かし計算をしたり、手を動かして実験をしたりするその過程はとてもスリリングで楽しいものです。…というわけで、まだこのシリーズ(も)まだまだ続きます。(>>「水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回」を読む)

2010-06-26[n年前へ]

水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回 

 「続々 水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!?」の続きです。実験に使った水を入れた風船を観察してみることにしました。風船の中に水が満ちていた時にはわかりませんでしたが、水がある程度抜けたときのようすを撮影してみたのが下の写真です。写真を眺めてみると、火に炙(あぶ)られていた部分が何だか伸びていることがわかります。横から見ると、その部分がプックリ膨らんだ姿になってしまっています。

 ということは、炎にあたっていた部分は、(実験している時にはわかりませんでしたが)熱せられる間に厚みが変わっていたようです。また、ススがついていない部分がヒトデのような形になっていますが、その(ススがついていない)ヒドデ模様の先端がピンホールになっていることが多いようにも見えます。ただし、これはそういう印象を受けるというだけで、確かではありません。応力集中し、薄くなっている部分に高温の微粒子か何かが付着して、ピンホールが生じたのでしょうか…?

 実験に使ったゴムは保存してありますから、顕微鏡で観察してみたり、ススの付着状況を観察したり、ススの付着状況とピンホールの位置関係など、証拠品をもとに「どんなことが起きているのか・どんなことが起きる可能性があるのか」について、まだまだ色々と確かめてみたり・その過程を考えてみたりしたい、と思います。

水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回






2010-06-27[n年前へ]

水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第5回 

 「水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回」の続きです。今日は、「炎であぶると何が起こるか考える!?」中の解説、

 水の熱伝導率は樹脂と大差ありません。だから、水が対流しないと、すぐに100℃を超えてしまいそうですから、対流の効果は無視できそうにないですね。  また、水風船のゴム境界における熱伝達係数をαとすれば、風船ゴムへの流入熱量qは炎の温度とゴムの温度差にαを掛けた程度で,もし、 α=20[W/m^2/K]で炎が800℃強なら、qはおよそ16000[W/m^2]程度になりますね。これが風船を通過する熱流束ですから、風船の熱伝導率をλ,厚さhとすれば、ゴム外部表面と内側表面の温度差は ΔT=qh/λ より大きくはなることはありません。ですから、λ=0.16[W/m/K],h=200E-6[m]ならΔT=20℃で,水が100℃になっても表面温度は120℃止まりとなります。
に沿った解析計算を行うJavascriptフォームを作ってみました。各パラメータに適当な数値を入れて(最初に入力されているのが上旬的な値です)、「計算してみる(クリック)」ボタンを押せば、「横軸=風船ゴムの厚み、縦軸=ゴム風船の炎側表面の温度(℃)を計算して、表示します。計算を適当にはしょっている部分もありますが、大雑把な数値を算出することが目的ということで、ご容赦ください。

 ただ、この問題に関しては、色々な状況下における現象をすべて説明しようとするならば、ゴム内側にある水のミクロな状態・ゴム内部の均質性や・熱せられた材料の変形の話・そして炎から出る微粒子なども、さまざまな影響を与えているでしょうから、単純に説明するのは難しいかもしれませんね。


ゴム表面内側の水の温度[℃]:
炎の温度 [℃]:
風船のゴムの最大厚み[μm]:
ゴムの熱伝導率[W/m/K]:
ゴム境界における熱伝達係数[W/m^2 /K]:



水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第5回熱による水の動きを見る






2010-06-30[n年前へ]

水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第6回 

 「続々 水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!?」で、水で満たされている風船を炎で炙(あぶ)ってみる実験をしました。実験をしたのは、そこに至るまでの長い(といっても短い時間でしたが)の盛り上がりがあって伝熱シミュレーション計算や解析計算など、予想大会がなされてきたからです。

 今日は、水が入った風船を炎で熱した時に、風船の底近くの水温度変化を計測した猛者が現れました。(シミュレーション計算の専門家なので)伝熱シミュレーション計算もした上で、今回は、さらに自ら実験もしてみたというカッコ良さです。こういった、口だけでなく実際に何かを提供する人のカッコ良さにはいつも憧れてしまいます。

 その(風呂に入りながら行われたという)実験結果を示したグラフが下に示したものになります。グラフの横軸は、炎で熱し始めてからの時間(秒)で、縦軸は風船の底近くの水温度(℃)になります。数値だけ見ると、「大体こんなものだろう」と思える温度変化になっています。前回の伝熱シミュレーション計算結果と結果が異なっているのは、前のシミュレーション計算では対流の影響を考慮していないことなどが大きな原因かもしれません。

 ところで、この実験をした後の風船を眺めてみると、「水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第4回」と同じようなススの付き方になっています。面白いものです。ちなみに、実験条件に関する情報としては「外気温は約30℃、加熱源はライターで、途中からゴムが焦げる臭いがしていた、風船は(株)タイガーゴム製(世界初、新素材天然ゴムにより、ゴムの材質が非常によくなりましたとの記述あり)」ということです。

水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第6回水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第6回水風船をライターの炎であぶると何が起こるか考える!? 第6回






2010-07-12[n年前へ]

エクセルで楽しく・わかりやすくシミュレーションをしよう!? 

 基本的には表計算ソフトなら何でも良いのだが、エクセルを使って静電計算を行ったり、非定常3次元伝熱計算をしたりすることができるようになる、という実習講習会を今週する。毎年、夏が始まるこの季節に、そんなシミュレーション実習講習会の手伝いをしている。

 だから、夏が始まる前にはいつもエクセルのテクニックを調べたり・関連ツールを作ったりする。…そして、いつもエクセルを少し嫌いになったり・あるいは面白く感じたりする。

「Excel」上で動作する手軽な歴史シミュレーションゲーム「極小三國志」 というものを知った。

 「極小三國志 for Excel VBA」(以下、「極小三國志」)は、中国の後漢末を舞台にした簡易的な歴史シミュレーションゲーム。「Microsoft Excel」(以下、「Excel」)2003/2007に対応するフリーソフトで、編集部にてWindows 7上の「Excel 2010」で動作を確認した。作者のWebサイトからダウンロードできる。

 「極小三國志」は、魏・呉・蜀の三国が覇を争った“三国志”の時代を舞台にした歴史シミュレーションゲームで、「Excel」上で遊べる VBAマクロとして実装されているのが特長。
 こちらの方は、VBAで実装されていたり「歴史シミュレーション」だったりする違いはあるが、エクセル上で行う「シミュレーション」であることには同じである。

 エクセルを使い、楽しく・わかりやすくシミュレーションをして遊んでいる人・働いている人も多いことだろう。「私はこんな風にエクセルを面白く使っている」という話を聞きたい今日この頃だ。



■Powered by yagm.net