hirax.net::Keywords::「地震」のブログ



1998-12-27[n年前へ]

Wveletで周期解析をしてみる  

 音声・地震などの1次元信号や、画像等の2次元信号処理の解析というのはなかなか面白そうだ。そこで、周期ムラに対してWaveletをかけて周波数解析をする練習をやってみたい。また、短時間フーリエ変換とWaveletの比較もしてみたい。音声・地震などのデータはまた別にやってみることにして、今回は画像データを扱うことにする。ただし、いきなり2次元も何なので、画像データの周期(つまり1次元的な振動)に注目して、解析を行ってみたい。

 まずは、「周期ムラのある画像」と「周期ムラのない画像」の2種類の画像を作成する。画像はいずれも数式を用いて作成した。X方向に変化する縞模様であり、表.1のような演算式になっている。一応、2次元画像ではあるが、Y方向にはなんの変化もない。2つの数式を見比べてみると判るが、いずれも2項からなり、低周波数のSinと高周波数のSinからなっている。「周波数ムラのある画像」では、その低周波数のSinの中にさらにSinがあるので、周波数がある周期で変化していることになる。一見、「周波数ムラのない画像」の方でも低周波数のSinの内部にさらにSinがあるように見えるが、0が掛けられているので、実際には存在しないのと同じである。

表.1:画像を作成するために使用した演算式
 2つのSinからなり、その一方のSinの周期がムラ(一定の周期)をもっているもの。第二項目のSinの内部にさらにSinを入れることにより、周波数ムラを作っている。2つのSin波からなり、どちらの周期も正確なもの。第二項目のSinの中のSinは0をかけてあるので、何ら影響を及ぼさない。

 そのような数式に基づいて作成した画像を図.1に示す。なお縦軸がX軸であり、横軸がY軸である。図.2(b)では周波数ムラはないが、2つの周波数成分から作成されているため、うねりが生じている。

図.1:作成した原画像
 周波数ムラのある画像
 周波数ムラのない画像
図.1(a):
図.1(b):
 それでは、このような画像からX軸の方向に1次元データを抽出し、周波数解析をしてみる。Y軸方向にはなんの変化もないため、無視して良い。

 まずは、Wavelet変換である。図.2がその結果である。縦軸が周波数を示している。縦軸の上方向が高周波を示し、下方向が低周波を示している。また、横軸が原画像のX方向である。白は強度が小さいことを示し、黒は強度が強いことを示している。
 いずれの画像も2つの周波数成分からなることが一目瞭然である。また、図.2(a):「周波数ムラのある画像」の方では低い周波数成分の方が、さらにある周期で周波数が変化していることがわかる。

図.2:Wavelet解析を行ったもの (Daubechiesの6次のCoifletFilterを使用)
 周波数ムラのある画像
周波数ムラのない画像
図.2(a):
図.2(b):

 同じWavelet変換でも異なるFilterを用いてみると、結果は異なる。例えば、図.3がその例である。こちらの方が「周波数ムラ」がどのように生じているかを見るにはいいかもしれない。

図.3:Wavelet解析を行ったもの (Daubechiesの6次のLeastAsymmetricFilterを使用)
周波数ムラのある画像
周波数ムラのない画像
図.3(a):
図.3(b):

 それでは、Wavelet変換ではなくて、フーリエ変換を用いて周波数解析を行ってみる。先ほどの1次元データの全領域に対してフーリエ変換をかけてみる。その結果が図.4である。ここで、横軸が周波数を示し、右側が高周波数を示し、左側が低周波数を示している。縦軸は強度である。
 このフーリエ変換の場合も、2つの画像が2つの周波数成分からなり、図.4(a):「周波数ムラのある画像」では低周波数成分がぶれているのはわかる。しかし、その周波数ブレがどのようなものであるかまでは、わからない。

図.4:全領域にFFTをかけて、周波数解析を行ったもの
周波数ムラのある画像
周波数ムラのない画像
図.4(a):
図.4(b):
 それでは、短時間フーリエ変換をかけてみる。先ほどの1次元データに対して前の方から64点ずつ、位置をずらしながらフーリエ変換を行う。このようにすることによって、ある領域の周波数解析を行うことができる。その結果を図.5に示す。ここで、黒は強度が小さいことを示し、白は強度が大きいことを示している。横軸は原画像のX方向を示し、縦軸が周波数を示している。縦軸の上方向が高周波数を示し、下側が低い周波数を示している。結果はWaveletの解析と同様になっている。
 なお、単純のためにウィンドー処理はしていない。そのために悪影響は当然出てしまう。

図.5:短時間FFTをかけたもの
周波数ムラのある画像
周波数ムラのない画像
図.5(a):
図.5(b):

 単なる全領域にわたった周波数解析と、位置と周波数が同時にわかる解析の違いは非常に大きい。使いこなすのはなかなか難しそうだが....

1999-10-31[n年前へ]

ビックエッグの力学 

ドームを支える空気圧の謎

 この回は(トンデモ話)であり、中途半端であるのだが、反省を込めてこのままにしておく。直すのが、面倒くさいわけではないので、念の為。

 日本シリーズ'99をやっている(いた)。私は野球は特に好きでも嫌いでもないが、野球場でビールを飲むのは大好きだ。そういえば、今年はドーム決戦である(だった)。ドームといえば元祖「東京ドーム」だろう。「東京ドーム」のWEB

を、眺めていると、こういう記述がある。
 東京ドームは、空気膜構造によるエアドーム。つまり内部気圧を外気より0.3%高くして、400トンもの超特大楕円形の屋根を膨らませるのがドーム建築のポイントなんだ。
 ところで、この気圧差0.3%は、ビルの1Fと9Fぐらいの違いがある。とはいえ中と外の違いを体感することはほとんどない。

 たった、0.3%の空気圧の差で400トンを支えるとは、ものスゴイ。すぐには納得できない数字である。別に疑い深い私でなくても不思議に思うことだろう。

 そこで、確かめてみることにした。まずは、東京ドームの面積をx(m) * x(m)としてみる。すると、持ち上げることのできる重さ(トン)は、

  • 0.3 / 100(%から比へ) * 100(hPaからN/m^2へ) * x * x / 1000(kgからトンへ)* 9.8(Nから重力へ)


と計算できる(この式には実は間違いがある。詳細は後で...)。その結果を示してみる。

東京ドームのサイズに対する「持ち上げることのできる力」の計算結果
横軸=サイズ(m), 縦軸=「持ち上げることのできる力」(トン)

 先の、Webから東京ドームのサイズを見てみると、x = 180mである。すると、持ち上げられる天井の重さは100トン程度であるということになる。おやおや、先の「400トンの天井を持ち上げる」というのとはずいぶん違う。これでは、天井を支えきれない。

東京ドームのサイズ

 そこで、高さによる大気圧の差を導入し、天井近くの高い場所では「外部の気圧が低い」という条件を導入してみる。0.3%というのは地上での比で、天井のある上空ではさらに差があるとしてみるのだ。うーん、強引である。

 さて、ここから後は(実は前も)トンデモ話になっているので眉に唾をつけて読んで欲しい。それを指摘して下さった、読者からの手紙への返事(とほぼ同じ内容)を下に示しておく。

青木さんへの手紙> 高さによる圧力の差は、高さの異なる二点間に存在する空気> の重さに見合ったものです。したがって、ドームの内部でも> 高いところほど圧力は低くなっている筈です。 その通りだと思います。WEB中で「うーん、強引である。」と書いたのはまさにその理由です。 それにも関わらず、強引な論法を続けたのは、文章の最後に「謎は解けないのに、東京ドームは存在している。 少し、くやしい。 」と書いた理由と同じです。まるで、「宇宙人が水道橋の駅前駐車場にUFOを停めて、サラ金に入って行くのを目の当たりにしている」ような、気持ちなのです。くやしいと強引になるのです。あぁ、何て人間らしいのでしょうか... また、計算をしていた時に少し勘違いをしていました>もし、ドームの内外の温度が等しければ、地上でも天井でも内外の差圧は>同じになるはずです。と仰るとおり、差圧は等しいわけですが、それを0mにおける大気圧に対するパーセンテージに直すと、高度が高くなればなるほど、そこの気圧に対してはパーセンテージは高くなります。計算をしていた時にその「パーセンテージが高くなる」ことを「差圧が高くなる」ことと同じに扱うという間違いを犯してしまいました。もちろん、基準の気圧が小さくなっているので、パーセンテージが高くなっても本当は差圧は変わらないわけです。「考えることを手抜きしていた」と言ってもよいかもしれません。要反省です。>ドーム内の温度が高ければ空気の密度> が減少し、天井の位置での差圧はより大きくなり、天井を支> えるのに有利に働きます。これは、浮力によって天井が持ち> 上げられていると考えても同じ事です。> という訳で、ドーム内外の温度差が逆転する夏と冬とでは天> 井を支えるのに必要な圧力を変えなければならないと思うの> ですが本当はどうなんでしょうか。 これは面白そうですね。そういえば、学生時代に地殻物理学を専攻していたのですが、夏と冬の大気圧の違いから、地殻歪の大きさに関係づけて、地震の予言をするなら、「冬に発生する」といった方が良い、話(もちろんかなり冗談で)をしていた先生がいました。その先生に「今回のトンデモ話」がばれたら、大目玉をくらうこと間違いなしです。 ビックエッグの謎は深まるばかりです。それでは、また。------------------------------------------------------------------ch3coohさんへの手紙> > >12/(100*100)*1000= 1.2g/cm2となります。> > >> > >地上での大気圧は約1Kg/cm2なので、上の値は> > >1.2%程度となり、 ここが疑問だったのですが、これは1.2%でなくて、0.12%ですね。なるほど、0.3%よりも小さいですね。実に納得です。 さて、他の方からの指摘もあり、私の計算には> >0.3 / 100(%から比へ) * 100(hPaからN/m^2へ) * x * x > / 1000(kgからトンへ) * 9.8(Nから重力へ)> に1013(標準気圧 hPa)がかかっていないことが気になりました。 という間違いがあることがわかりました。全てはここが原因だったようです。 全ての疑問が解決しました。いやぁ、お恥ずかしい。また、他にも色々と面白い情報ありがとうございます。

 ひとつわかったことは、間違いをすると読者からの手紙が沢山来るといううれしくもつらい事実であった。ここから、あとは封印したい思いで一杯なのだが、自戒を込めてこのままにしておく。しつこいようだが、直すのが面倒なのではない。

 それでは、高さによる大気圧の差を計算してみる。理科年表から15℃の「標準大気の場合の高さと気圧の表」を見てみる。 ちなみに、東京ドームの温度は、「ガス熱源による冷暖房システムにより、夏期は28℃の冷房、冬期には18℃程度の暖房が行われている」とある。今回の計算は外気の温度が15℃で、内部は冬期には18℃程度の温度に調整されているものとしておこう。
 標準気圧は海抜0mで1013mbであり、200mでは989.5mbである。理科年表が古いのでPascal値でなく、mb表示になっている。

 これから、1m当たりのmb変化を計算すると、0.12mb/mとなる。比率に直すと、0.012%/mということになる。例えば、「ビルの1Fと9Fぐらい」の高さの差は30m位であろうから、それを大気圧の比に直すと、99.6%位となり、先の記述と大体合う。

以下に、高度に対する大気圧の差(の比 %)を示してみる。

高度に対する大気圧の比
横軸=高さ(m), 縦軸=大気圧の比(%)

 このグラフで30mの場所を見てみると、99.6%位というわけだ。これが、先のWEB上の「この気圧差0.3%は、ビルの1Fと9Fぐらいの違いがある。」という説明と合うわけである。

次に必要なのはドーム外部と内部の大気圧の比から、力に直してみる。基準面からの高さ0mにおける気圧を1hPaとして、1hPa = 10^2 N/m^2 = 10^2 m^-1 kg s^-2という単位換算を使うと、持ち上げることのできる重さは、

  • (100-大気圧の差(の比 % )) / 100(%から単なる比へ) *9.8(重力に換算) / 1000(kgからトンへ)* 100(hPaからN/m^2へ) * x^2(ドームの面積)
という式で計算できる。

 東京ドームの高さは「グラウンド面から 61.69m」とあるので大雑把に100mとしてみる。

天井の高さを100mとした時の、東京ドームのサイズに対する「持ち上げることのできる力」
横軸=東京ドームのサイズ(m), 縦軸=「持ち上げることのできる力」(トン)

 この計算結果によれば、東京ドームのサイズを180mとした時には、「持ち上げることのできる力」は400トン位になっている。ということは、先のWEBの記事と大体一致するわけである。

 しかし、この計算では致命的な欠陥がある。天井の高度が低いときには、400トンを持ち上げるためにはもっと高い「ドーム内部の圧力を必要とする」ことだ。

 例えば、0.3%空気圧の差の条件で、「天井の高度」に対する「持ち上げることのできる力」を計算してみると、次のようになる。

「東京ドームのサイズ」と「天井の高度」に対する「持ち上げることのできる力」
横軸=「天井の高度」(m), 縦軸=「持ち上げることのできる力」(トン)

 これでは、天井の高さが下がるとますます天井の重さを支えきれなくなってしまう。それに、そもそも天井をどうやって持ち上げたのだ?屋根を持ち上げるインフレートという作業はどうやって行ったのだろう?

 今回の計算は謎が増えただけかもしれない。謎は解けないのに、東京ドームは存在している。
 
 少し、くやしい。

2001-01-17[n年前へ]

阪神大震災の二年前 

 私が大学院を出る少し前に、私のいた研究室は「地殻変動国際シンポジウム (CRCM'93)」というものを主催していた。京都国際会議場はもう押さえられていたので、神戸国際会議場で開いた。神戸近くには断層もたくさんあるので、見学ツアーなども企画していた。そのCRCMの開催期間の1993/12/6/〜11は神戸に泊まっていた。その神戸を中心として阪神大震災が起きたのは、その二年後だ。
 私のいた研究室は地震学の研究室ではなく、「地震予知の実現性」に関してはかなり懐疑的な立場をとっていた。しかし、予算申請書などには予算を得るために「地震予知」を大きく謳うわけだ。もちろん、私もそんな科研費の申請書を書いた覚えがある。つまり、私も「地震予知」のために予算をもらっていたわけなんだよなぁ。

2002-04-13[n年前へ]

EarthBrowther 

 「EarthBrowser は地球全体の状況を美しいグラフィックで直感的に把握できる新しい革新的なプログラムです。そして、EarthBrowserはただの3Dイメージではありません。 最新の天候、天気予報、地震、火山、雲の様子、世界中からのWebカム画像などを表示する事が出来ます。EarthBrowserは随時更新される情報によって地球が生きている事を実感できる大変ユニークなツールです。」
 わきさんが欲しがってたようなやつ。面白い。(リンク

2004-09-17[n年前へ]

キーワードのリンク量変動幅≒「バースト度/頻度の推移」 

「バースト度/頻度の推移」とは話題(キーワード)の注目度を自動的に分析する指標として、「blogの各entryが持つ日付の情報を利用して、任意の話題(キーワード)に関する注目度(burst度)を分析、グラフ表示することが出来ます。この注目度は、Web上でその話題が「いつ」「どのくらい」注目されたかを示す値になっています。*」というものです。
 なんていうキーワードのリンク量変動幅≒「バースト度/頻度の推移」 例えば地震の例。from ふじきにっき



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