2000-03-18[n年前へ]
■Dilay WEB's True Colors
WEBの本音 (色弱と色空間その5)
本屋でMookの辺りを眺めていると、「できるWEBデザイン」というようなタイトルがついた書籍が沢山ある。WEB上の情報でも「ホームページ」AND「配色」で検索をかけたりすると、これも山のように検索結果が出てくる。「WEBページの色使い」というのは、見た目ですぐわかるだけに気にする人が多いのだろう。もちろん、本「できるかな?」でも、これまで
- WEBページは会社の鏡- WEBページのカラーを考える 1 - (1999.04.24)
- WEBページは会社の顔色- WEBページのカラーを考える 2 - (1999.04.26)
- WEBページは会社の心(色弱と色空間 その2) - WEBページのカラーを考える 3 - (1999.08.10)
ところで、辞書で"color"をひくと、「立場、姿、見せかけ、口実」と載っている。そういうこともあってか、どうも「色」というものもなかなかに苦いものでもあるように思う。それが、シンディ・ローパーの歌でも有名な"truecolors"になればなおさら、である。「色」というのは実に不思議で、面白いものである。
そして、色を見る力である"vision"も辞書をひくと、光景、想像力、洞察力、予言力、未来像…など、とても興味深い言葉が多く、とても不思議である。
"color"=立場、姿が百人百様であるのと同じく、"color vision"=色覚にも多様性がある。WEBの「配色」、そして、色覚にも多様性と言えば、とても役に立つ情報がある。以前、
- からーふぃくしょん( http://sun.endless.ne.jp/users/tanafic/ )
- Webの色についてのアンケート1998/05/**
- http://sun.endless.ne.jp/users/tanafic/ank/ank_fr.htm
- KRISTALL+ クリスタル・プラス( http://homepage1.nifty.com/kristall-plus/ )
さて、この「からーふぃくしょん」で行われた「アンケートで用いられた色の組み合わせ」は次のようなものである。
この25種類の「できるかな?」の中で読みにくい色はどれだろうか? といっても、これでは「これ」と言いづらい。そこで、「からーふぃくしょん」ではこれらに番号付けがなされており、
となっている。私などは、この中ではNo.17(緑背景に赤文字)とかNo.23(紫背景に赤文字)などはいまひとつ読みにくいので好きではない。そういう自分の好みははっきりとわかるのだが、他の人の感性に沿って考えるということは、なかなか私にはできない。いや、全然できない。そこで、
の時に作成した「色覚モドキソフト」により、この「色の組み合わせ」を解析してみることにした。それによって、色々な人の感覚を想像してみることにしたのである。ソフトで人の感覚を想像するというのも情け無い話ではある。まぁ、自分で作るソフトで想像するのであるから、自分で想像した気にも、少しはなれるというものである。 前回作成した"truecolor2.exe"ではInternet上の画像ファイルのみに対応していたのみであった。インターネット上のファイルは解析できても、自分のPCの中のファイルは解析できなかったのである。だから、使い勝手がかなり悪かった。そこで、今回バージョンアップしたtruecolor3.exeを作成してみた。
この"truecolor3.exe"は、そうそう役に立つとは思わないが、一応ここにおいておく。
この"truecolor3.exe"は、ローカルのファイルを開いて処理する機能を持っている(本来、当たり前の機能であるが…)。なので、上に挙げたような表を画像ファイルに落とした後に、この"truecolor3.exe"で解析してみるのである。
一例を以下に示してみよう。これは、truecolor3.exeで上の画像を処理(Lを50%程度にしたもの)したものである。その処理の意味は「色覚モドキソフトを作る(色弱と色空間その4)- 五十歩百歩 - (1999.12.12)」を読めば判るであろうから、ここでは特に言及しない。あえて、(変な風に)言うならば色々な情報を引いてみたときに、それでも情報をちゃんと伝えられるか考えてみる、といった所である。
使い方であるが、
下の左のボタンを押す -> ローカルファイルを開く、
そして、
下の右のボタンを押す -> インターネット上の画像ファイルを開く
ようになっている。その後に、L,M,Sの各スライダーを上下させることで、画像に変換をかけるわけである。
一体、この画像変換例の画像中で読みにくそうな番号はどれだろうか?No.1,No.3, No.4, No.19, No.23といったものだろうか? このような変換画像と先の「からーふぃくしょん」のアンケート結果と見比べてみると、面白いと思う。No.23などは私も見づらいことでもあるし、「あまり使って欲しくない色使い群」だ、と言えるのかもしれない。また、ここでは画像変換の一例のみを示したが、自分のWEBページ画像に対して色々と処理をしてみると面白いと思う。
色々な処理をした時に、どれが「本当の色」="true colors"であるかは判らない。そして、そんなものが本当にあるのかどうかも怪しいものである。しかし、そういったことを考えてみるのは、とても興味深いことだと思う。そして、その色を認識する"vision"についても、もっと考えてみるべきだと、思う。
さて、現在のHIRAX.NETのトップページ(http://www.hirax.net/)の基本色はNo.8とNo.16である。先の「カラーフィクション」におけるアンケート結果を見ると、そんなに悪い配色ではないようだ。ひとまず一安心である。
2000-06-16[n年前へ]
■書籍デジタル化委員会(電子図書館)
(リンク)from http://www2s.biglobe.ne.jp/~ryo2/diary000131.html
2000-07-18[n年前へ]
■モザイクの向こう
隠しているから良いのです
「できるかな?」への質問?で、同じような内容のメールを頂くことがよくある。その内の一つは、
感温液晶の入手先を教えて下さい。というものである。何か不思議な気がするのだが、けっこう感温液晶を欲しいと思う人がいるらしい。しかも、そのような人はインテリア関係を扱う人が多い。「人のぬくもり」を感じさせるものを作りたい、というわけのである。これを逆に言えば、「人のぬくもり」を感じさせないものが世の中には溢れているということなのだろう。液晶という実に物理的なものを通して「人のぬくもり」を感じることができる、ということが実に不思議で同時に爽快でもある。
さて、私自身は新宿の東急ハンズで感温液晶を購入したのだが、その人達のメールによれば、最近はどうも置いていないらしい。仕方がないので、
- 日本書籍 後藤富治 村上 聡 著 おもしろ科学モノ情報 200選 2000年版
感温液晶シートですが、実験材料でなくて遊ぶのにという返事を最近は出すことにしている。
使うのでしたら、光洋 03-3212-1571にあるようです。
日比谷パークビル9F
平日8:30-5:30
JR有楽町駅近く
そういうわけで、こちらの感温液晶の入手方法に関するメールの方は良いのだが、もうひとつのよく頂くメールの内容がある。こちらの方はメールを頂いても、返事ができるわけでもなく、いつもそのままになっていた。その内容はと言えば、
画像処理と言えば、まずはAVのモザイクの消し方を研究して下さい。というものである。AVのモザイクというと、あの映してはマズイ部分を隠すアノ画像処理のことだろう。本来のモザイクという言葉のモノだけではなくて、アノマズイ部分を隠す画像処理一般について、それをどうにかして欲しい、と言っているのだろうと思う。
しかし、そう言われても困ってしまう。もちろん、私は「見えないもの」を「見える」ようにするのは大好きであるし、趣味でも仕事でも、「見える?見えない?」の境界線に興味を惹かれ、日夜考え続けている。だから、AVのモザイク〜マズイ部分を隠すアノ画像処理〜のようにわざわざ「見えない」ように細工をされてしまうと、それを何とか「見える」ようにしたいという気持ちが無い、と言ってしまうと嘘になるだろう。
しかし、残念ながら、このAVのモザイクの件に関しては「見えない」方が良いと思っているのである。それは、私の好みの根幹に関わる部分なのであるが、ダラダラと言い訳を書いても仕方がない、やはりここはFAQに対しての答えを用意しておくべきだと考えて、ここに簡単な説明を書いておくことにした次第である。
まずは、代表的なマズイ部分を隠すアノ画像処理の種類を示してみたい。次に示す画像は左から、
- オリジナル
- オリジナルに「モザイク」をかけたもの
- オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
- オリジナルに「塗りつぶし」をかけたもの
この3つのマズイ部分を隠すアノ画像処理のなかから、今回は
- オリジナルに「モザイク」をかけたもの
- オリジナルに「ぼかし」をかけたもの
さて、まずは「モザイク」に挑戦してみたい。試しに、ミロのヴィーナスのヌード画像に対して、「モザイク」をかけてみよう。次に示すのが、とあるヌード画像に対して「モザイク」をかけたものである。
19kB | 1kB |
GIF画像ということで圧縮もかけてあるため、一概に比較はできないが、オリジナル画像が19kBであるのに対して、右の「モザイク」画像は1kBしかない。つまり、情報量がおよそ1/20であるわけだ。それもそのはず、上の「モザイク」画像は実はオリジナル画像を単に縮小したものを拡大表示してみたものである。情報量が少なくなるのも当然だろう。
19kB | 縮小したもの(GIF画像) 1kB | 単に拡大表示したもの 1kB |
それでは、画像の情報量が減ってしまっている場合に、元の画像を復元することはできないのだろうか?いや、ハッキリと言えばヌード画像に対して「モザイク」がかけられてしまったとしたら、その「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできないのだろうか?
それが実はできるのである。その証拠に巷には「AVモザイク消し器」というものが溢れている。また、そんな大層な機械でなくても、巷には「モザイク」の向こうを見通すノウハウという秘伝が伝えられている。例えば、私がリサーチした限りでは、
- TVの前に半透明のシートを張る
- 目を薄開きにして、TV画面を見る
その原理とは「オリジナルの画像の性質を考える」ことである。先のオリジナルのヌード画像をじっくり見ればわかると思うが、ヌード画像というものは割合滑らかである。マッチョなヌード画像ならばいざしらず、少なくとも女性のヌード画像は普通滑らかな画像であるわけだ。当然である。だとしたら、その性質をフル活用してやれば、「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことができるのである。
もう少しわかりやすく言うと、こんな感じだ。まずは、滑らかなグレイスケールの画像に「モザイク」をかけてみよう。
オリジナル | |
上の画像に「モザイク」をかけたもの |
すると、元のオリジナル画像は極めて滑らかな画像であるのに、下の「モザイク」をかけた画像は「モザイク」のせいで滑らかでなくなってしまっている。だとすれば、「モザイク」画像を滑らかにしてやれば、元のオリジナル画像っぽくなるのではないだろうか?周囲の画像を考えながら、滑らかな画像にすれば良いのではないだろうか?具体的に言えば、注目画素の周囲で平均値などを計算してやればよいのだろう。つまり、「ボカシ」をかけてやれば良いのである。「ボカシ」をかけると画像はソフトで滑らかになる。「モザイク」をかけた画像が滑らかでなくなってしまっているのを、「ボカシ」をかけることで滑らかにして、元の画像っぽくしてやれば良いのだ。
先の秘伝
- TVの前に半透明のシートを張る
- 目を薄開きにして、TV画面を見る
例えば、上の「モザイク」画像にぼかしをかけたものを次に示してみよう。「モザイク」画像にぼかしをかけることで、元のオリジナル画像に極めて近い画像になっていることがわかると思う。
オリジナル | |
上の画像にモザイクをかけたもの | |
モザイク画像にぼかしをかけたもの |
これが、いわゆるひとつの「モザイク」の向こうのヌード画像を拝む秘訣なのである。試しに、先のとあるヌード画像に対して「モザイク」をかけた画像を「ぼかす」ことで「モザイク」の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の画像である。「モザイク」画像よりはオリジナル画像っぽいことがわかると思う。
オリジナル | オリジナル画像に モザイクをかけたもの | モザイク画像に ぼかしをかけたもの |
さて、それでは逆にオリジナルに「ぼかし」をかけることでマズイ部分を隠すアノ画像処理をした場合はどうだろうか?この場合は「モザイク」の向こうのヌード画像を拝むことはできるだろうか?
といっても、こちらは以前
で扱っているので、ここでは詳しく書かない。ぼけた画像は例えば、- ウィーナ・フィルタ
- ハイパス・フィルタ
と書くだけでも何なので、試しに、Photoshopのカスタムフィルタで簡単な「ボカシ復元用フィルタ」を作成してみたものをここにおいておく。Photoshopユーザは試してみると面白いかもしれない。
このカスタムフィルタの内容はごく簡単なオペレータ演算で、次の図に示すようなオペレータ演算子を用いたフィルタである。 試しにこのカスタムフィルタを用いて、とあるヌード画像に対してかけられた「ぼかし」画像の向こうのヌード画像を拝んでみたのが次の例である。ちなみにここでの「ぼかし」はPhotoshopでガウス「ぼかし」の半径4ピクセルの設定でフィルタをかけてみたものだ。
オリジナル | オリジナル画像に ぼかしをかけたもの | ぼかし画像に 先のカスタムフィルタをかけたもの |
こんな簡単なカスタムフィルタでもとあるヌード画像の「ボカシ画像」を鮮鋭化できて、その「ぼかし」の向こうのヌード画像を拝むことができることが判ると思う。
実際に、私がネット上で膨大な数のエロ画像、いや違った「ボカシ」画像だ、を収集し試した結果ではかなりの割合の画像に対して、驚くべき効果を挙げることができた。本WEBに訪れるような方のほとんどには当然の知識だとは思うが、もしもこういった処理をかけたことのない方がいらっしゃれば、是非一回挑戦しみてもらいたい。特に素人ヌードの「ぼかし」画像がお薦めである(あくまで復元効果の大きさに関してだけど)。
さて、ここまで書いてから言うのはどうかと思うのだが、以前
でも書いたように、私は「素晴らしい芸術は完全な自由の中では生まれない」と思っている。それと同じで、制限の中で表現する方が実は素晴らしいものができると思っているのである。それは、私服の女子高生には心ときめかないが、制服の女子高生には思わず目を惹かれるのと同じである。完全に何でもありの私服だと実はそう簡単に輝かないのだが、制限のかかっている制服だと何故かとても輝いてしまうのと同じだ。私などは、通っていた高校が制服がなかったため、思わず同級生に「セーラー服を着て来てくれぇ」とリクエストをしてしまったくらいである。あれ、何の話だっけ...そう、つまりわざわざ隠してある部分を眺めてみることは良いとは思わないのである。隠してあるものは、隠しておいたままにしておいた方が良いのではないか、と思うのである。
そう言えば、先ほど「ミロのヴィーナス」の画像用に表紙を使わせて頂いた細野不二彦のギャラリーフェイクの中では、主人公藤田が、
「ミロのヴィーナスは腕が隠されているからこそ、人々の心を捉えたんじゃないですかね」というようなことを言う。私も本当にそう思う。
「ミロのヴィーナス」の存在しない腕を想像することで、現実には作りえない理想の姿を、その像を見る人々は感じることができるのだろう。隠してあるからこそ、良いのである。
あまりに緻密に描写した弟子に「言い仰せて何がある」と言ったのは松尾芭蕉だったはずだ。想像する余地を残して、現実よりもさらに大きいものを表現した方が良い、ということである。私も本当にその通りだと思う。ある一部分だけを切り取ってその部分だけを見てみて、後は想像力におまかせというのが、私も表現としては一番良いと思うのである。もちろん、全ての人の想像力を越えるものを表現する力があるというならばともかく、そんなことができないのならばわざと一部分だけを表現するのが一番良いと思うのである。
いや、だからって別に私が変な想像をしまくりってわけじゃないとは思うけど。かといって、私が想像力とか好奇心が少ない方かと言われると...うーん...
2001-05-01[n年前へ]
■昨日書いたメール 縦書き文字編
平林@hirax.netです。なるほど、たしかに仰るとおりプリンタで印字するときに
不利になるのは「横書きにした日本語にとって不利」なのかもしれませんね。
ちょっと本文を書き直して、あと「いろいろ」に麗美さんのメールの中の話を
紹介させて頂きたいな、と思ってます。もし、マズければ教えてご連絡下さい。
それにしても、麗美さんの博識ぶりには驚きます。また、面白い話など
聞かせて頂けたら幸いです。
jun hirabayashi jun@hirax.net
> こんにちは、麗美です。
> 今回も楽しく読ませていただきました。
>
> >プリンタなどの印字装置でも横方向の解像度を高めようとはするが、
> >縦方向の解像度は低いままにしているのである。もちろん、縦方向の
> >解像度を高くすると印字速度が遅くなってしまうという、プリンタの
> >特性があるにしても、やはり日本語を印字するためには不利な設定と
> >なっているのである。
>
> 思わず「うんうん」とうなずいてしまったのですが、
> でもよく考えてみると、ちょっと違うかも…と思うようになりました。
>
> というのは、「縦文字文化」というからには、日本語はやはり基本的に
> 縦書きで印刷することを基本とすべきですよね(実態はともかく)。
> ところが縦書きで印刷する場合、段組以外では縦長の用紙に印刷すると
> 1行が長くなって読みにくいものになります。段組しない場合は、横長
> の用紙に印刷するのが縦書きの基本だと思うのです。文庫本や新書など
> 書籍は縦長じゃないかと言われるかもしれませんが、印刷時は2ページ
> を1枚に印刷する(たとえば袋とじなど)と考えれば、やはり横長の用紙
> ということになりますね。
> で、パソコンのワープロなどで印刷する場合、横長の用紙に印刷するに
> は用紙の方向は縦長のときと同じで、文字の向きを変えて印刷するのが
> 普通ですから、印字方向は文字の縦方向ということになります。
>
> とすると、日本語を印字するには不利な設定とは必ずしも言えませんね。
> 縦書き印字の場合、プリンタの解像度の高い横方向が漢字の高周波成分
> の多い縦方向であるからです。
>
> 「縦書き文化」の日本語にとっては必ずしも不利な設定ではなく、むし
> ろ「横書きにした」日本語にとって不利なんではないでしょうか。