hirax.net::Keywords::「赤外線」のブログ



2008-12-03[n年前へ]

ハードウェア要らず?の遠隔リモコン制御 

 「汎用赤外線リモコンI/Fが使えないエアコンを外出先からオン・オフするにはどうしたらいいか?」ということが話題になっていました

 使える材料として「遠隔操作できるPC」がある、ということなので、「(新たに追加する)ハードウェア要らず?の遠隔リモコン制御」を私も考えてみました。それは「CDトレイをソフト制御してエアコンのリモコンのオン・オフをする」という、実に原始的メカニカルな「アイデア」&「実装」です。

 思いついたらやってみよう!というわけで、ソフトウェアを仕立て、万力でエアコンのリモコンを固定して、hirax.netが稼働しているサーバのCDドライブを外に引っ張り出し、実際に検証してみた結果が下に貼り付けた動画です。ケータイで撮影した動画ではわかりづらいかもしれませんが、CDトレイの角でリモコンのボタンがきちんと押されて、エアコンがピピッと鳴り、そしてエアコンからの送風が始まりました。

 ちなみに、書いたコードはwin32GuiTest.rbを使ったので、こんな具合になります。「書いた」というほどのものでは、ないことが丸わかり…です。

require 'win32GuiTest'
sleep 5
gui=Win32GuiTest.new
gui.cdAudioDoorOpen
 動作としては、CDトレイが開き、リモコンのボタンを押し、何かにぶつかったことをCDドライブが検知し、CDドライブのトレイが(勝手に)自動で閉まる・・・という具合です。こういう動作をするスクリプトを外出先からPCを起動させる時に動かせば、あるいは、常時動いているhttpサーバからでも呼んでやれば、遠隔リモコン動作システムのできあがり、ということになります。

 というわけで、今日作ってみたガラクタは「ハードウェア要らず?の遠隔リモコン制御システム」です。

Remotish






2008-12-24[n年前へ]

「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」 

 スラッシュドットで「レーザープリンタで光沢紙に車のナンバープレートを出力し、スピード違反取締りカメラを騙す」という記事を読んだ。この記事を読んでふと疑問に感じたのが、「プリンタで偽造したナンバープレート」をどの程度鮮明に「速度取り締まり機」で撮影することができるか、ということである。

 なぜかというと、レーザープリンタで使われるインク(トナー)は赤外光をほとんど吸収しないからである。カーボンブラックを使った黒いインクは赤外線を吸収するが、それ以外のマゼンタ・シアン・イエローといった色インクは赤外線をほとんどそのまま透過させてしまう。右下の図が、光の波長と透過率を示したグラフである(ディジタルハードコピー技術 P.119)。赤外線で眺めてみれば、カラーインクはほぼ透明に近いということがわかるだろう。

 一方、速度取り締まり機、オービスは赤外光で走る車を撮影する。つまり、カラーインクが光吸収しない波長領域で、ナンバープレートを見るのである。・・・ということは、もしもナンバープレートに描かれた「緑色の文字」をイエローとシアンのインクで描いたなら、それはオービスにとってみると「淡い色の文字」にしか見えそうにない。

 実際には暗い緑色を描くために黒インクも使われるだろう。しかし、もしも、イエローとシアンだけを使ってプリントしたなら、そのナンバープレートに描かれた文字は、オービスにはほとんど判別できない(透明)色になってしまいそうだ。人間が見ると、白地に緑色の(それほど不自然でない)ナンバープレートに見えるにも関わらず、である。

 一体、「プリンタで偽造したナンバープレート」は「速度取り締まり機」で眺めてみると、一体どのように見えるのだろうか。どのくらい違って見えるのだろうか。

 自分の目で見たものと他人の目が見るものが違うように、自分の目で見るものと機械が同じとは限らない。機械にはどんな風に見えるのか想像してみて、そして、検証してみることが大切なのだろう(参考リンク)。

ナンバープレートトナーの透過波長






2008-12-28[n年前へ]

「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」 実験編 Part.1 

 「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」で、「赤外光をほとんど吸収しない通常のカラーインクで、ナンバープレートの緑文字を描いたなら、赤外線領域で撮影する速度取り締まり機・オービスからは非常に淡く見えそうだ。一体、プリンタで偽造したナンバープレートを速度取り締まり機で眺めてみたら、一体どのように見えるのだろうか」 と書きました。・・・疑問に思うだけで何もしないのはつまらないですから、実験をしてみることにしました。

 まずは、デジカメを改造します。デジタルカメラの撮像素子の前には赤外線を通過させない赤外線カットフィルタ(シート)が張られていますから、その赤外線カットフィルタを取り外してみます。

 そして、赤外線を撮影することができるようになったそのデジカメのレンズ前に、今度は赤外線だけを通過させる可視光カットフィルタ(右図)を貼り付けてみます。すると、「赤外線だけを撮影できるデジタルカメラ」ができあがります。このデジカメを使えば、「赤外線で見た車のナンバープレート」を撮影することができるわけです。

 とりあえず、今日は、ホワイトボードに黒色ペンと緑色ペンでプリンタで偽造したナンバープレートを模した絵を描いてみました。それが、一番上に貼り付けた写真です。そして、そのナンバープレートの絵を赤外線だけで撮影してみたのが右の写真になります。

 右の写真を見てみると、黒色ペンで描いた部分はハッキリ見えますが、緑色ペンで描いた部分はほとんど透明になってしまい、ナンバープレートの数字がほとんど見えなくなってしまうことがわかります。少なくとも、ホワイトボードとホワイトボード用色ペンで描いた「(いかにもバレバレですが)偽造ナンバープレート」は、速度取り締まり機・オービスからは識別することができなさそうです。

可視光写真赤外写真可視光カットフィルタ






2008-12-31[n年前へ]

赤外線で見る「マチスの画集」 

 「プリンタで偽造したナンバープレート」と「速度取り締まり機の撮影波長」 実験編 Part.1 で書いたように、普通の印刷やプリンターなどで使われる(黒以外の)カラーインクは赤外線を吸収しないものが多い。私たちの目には鮮やかな色を見せるカラーインクでも、赤外線の目から見ると単なる透明のインクでしかなかったりする。通常の四色印刷で使われるインクのカラーインクは、赤外線にとっては全然「カラー」ではないのだ。

 美術書の頁をめくりながら、マチスの画を眺めている時に「この頁を、このマチスの画を赤外線で眺めたらどんな風に見えるだろう」と、ふと思った。そこで、可視光をカットし赤外線だけでマチスの画を眺めてみた。すると、やはり、肌色も鮮やかな赤も緑も消えて、色のない黒い部分だけの画になった。

 実際のマチスの画を赤外線で眺めてみても、きっと、こんな風には見えないだろう。一体、どんな風に見えるだろうか。自分の目とは違う目で、色んなものを眺めてみたいとよく思う。

 絵や本を読むと、そんな思いが少しかなうのがうれしい。

マチス赤外線でマチス






2009-01-11[n年前へ]

カメラ付きケータイで赤外線の世界を見てみよう!? 

超ポータブル赤外線カメラを作る

 人は、おおよそ380nm~780nmの波長の電磁波を見ることができます。この人が見ることができる電磁波は、可視光と呼ばれ、私たちが日常生活で使う「光」という言葉、狭い意味での「光」は、この380nm~780nmの波長の電磁波です。400nmくらいの波長の光は紫色に見え、それより短い(人には見えない)波長の光が紫外線です。また、700nm程度の波長の光だと赤色に見え、それより長い波長の光は赤外線と呼ばれます。

 今日は自分には見えない「赤外線の世界」を簡単に見ることができる道具、しかも、小さくて持ち運びにも苦労することもない道具を作ってみることにしました。道具作成に使ったのはカメラ付きケータイとゼラチン・フィルムです。携帯電話には、赤外線を写すことができるカメラが付いていることが多いものです。たとえば、下の動画は900nm程度の赤外線を照射する赤外線リモコンをケータイのカメラで動画撮影してみたものです。人には見えない赤外線リモコンが発する光が見えています。





 そこで、ケータイに付いているカメラのレンズ前に「赤外線を通し、可視光をカットするフィルタ」を付ければ、赤外線で見る世界をケータイのカメラを通して眺めることができる「赤外線カメラ付きケータイ」に変身するわけです。というわけで、右の2枚の写真が、「改造前の”ノーマル”ケータイ」と、レンズ前に820nm以下の光を通さないフィルタを(入手方法)セロハンテープで貼り付けることで「赤外線カメラ」に改造したケータイになります。ケータイですから、もちろん、持ち歩くのもとても簡単です。しかも、片開きドアのように「可視光カットフィルタ」を取り付けておけば、普通の可視光写真を撮るモードと赤外線写真を撮るモードを切り替えるのも簡単です。




 というわけで、上の写真が散歩の途中で撮った写真です。左が可視光で眺めた景色で、右が赤外線で眺めた景色です。赤外線で眺めると、上空の青空は暗くなり、暗い空に雲が輝いています。また、その一方地上では、葉緑素(クロロフィル)は赤外線を強く反射するので、木々の葉は眩しく輝いています。まるで、白い綿菓子をまとっているかのようです。


 また、普通の街並みを赤外線カメラ付きケータイで動画として眺めてたのが、下の動画です。いつも見慣れている交差点も、赤外線で見てみると、何だか現実感のない不思議な世界に思えてきます。自分がよく知っている可視光の世界とは、違う世界が見えてきます。





 赤外線カメラ(付きケータイ)を手にして街を歩けば、そしてさまざまなものを赤外線の目で眺めてみれば、驚くほど違う世界が見えてくるような気がします。四季折々の木々や草花、もしも、超ポータブル赤外線カメラを持ち歩いたとしたら、一体どんな景色が見えてくるのでしょうか。

カメラ付きケータイカメラ付きケータイ可視光写真赤外線写真可視光写真赤外線写真赤外線写真








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